あかんと言わずに

「この席に座りたいねん!あかん?」

少し前の出来事です。授業前、少し早く来た小学5年生のKくんが言うのです。そして、勝手に座りたい席に座って机にしがみつき、その席は自分の席だと主張しています。ちょっとイタズラをしたいといった様子ではなく、かなり本気の様子です。

子どもたちが望ましい行動をとらないことは多々あります。そんな時、どう接したら良いのでしょうか。有効だと感じているのは、相手の立場に立った上で視点を与え、そして、自分で考えてもらうことです。K君には次のように話をしました。

「Kくんが座りたい席で勉強できたらめっちゃいいなって思うねん。ただ、もしKくんが自由に決めるんだったら、みんなも自由に決めたいと思うねんな。それで、みんながその席に座りたいって言ったら、どうなるやろ?ちょっと考えてみてほしいねん。」

一度教室から離れ、数分して教室を覗くと、Kくんは本来の席に座っていました。彼は私に従ったのではなく、自分で考えてそうしたのです。私はダメだとは一言も言っていませんし、むしろ、それが表情や声に現れないよう細心の注意を払いました。何より、とてもスッキリしたKくんの表情から、自分で決めたことがわかりました。

叱ったり、ルールを押し付けたりしてKくんを無理やり従わせることもできたと思います。そうした方が、手っ取り早く望ましい行動を取らせることができたでしょう。ただ、そうした場合には、いくつかの代償を支払わなけばなりません。

最も大きな代償は、成長の機会を逸してしまうことです。無理やり従わせても、心からそうしているわけではありません。叱られたくないから仕方なく従っているだけなのです。「わがままを言うことは良くない」という価値観は彼の中には育たず、そして、私の影響が及ばないところで、彼の行動は何も変わらないでしょう。

もう一つの代償は支援者からの転落です。仮にKくんを無理やり従わせたとします。そのとき、Kくんは私に対してどのように感じるでしょうか。きっと、反発を感じると思います。そして私のことを、支援者ではなく、支配者だと認識するようになるでしょう。そうなってしまった後、Kくんの勉強がうまくいくよう支援したいと願っても、支援の機会は訪れないでしょう。

その日以来、Kくんがそのようなわがままを言うことは一度もありません。きっと私の視点を取り入れ、彼自身のものにしたのだと思います。そして、Kくんとの関係は何も変わっていません。相変わらず塾に来るなり事務所にやってきて笑顔でいろんなことを話してくれます。

「相手の立場に立った上で視点を与え、そして、自分で考えてもらう。」

望ましい行動を取らない子どもと接する上で、大変有効だと感じています。ただ、同時に大変難しいことであるとも感じています。そんな難しい問題について保護者様と一緒に考え、子ども達の良き支援者として一緒に成長していきたいと考えています。

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