学習の問題は、心の問題

どんな塾?

成績を上げるためには、勉強する必要がある。勉強方法を改善する必要がある。多くの親御様と同じように、私たちもそう思います。ところで、なぜ、お子様は勉強しようとしないのでしょうか。なぜ、勉強方法を改善しようとしないのでしょうか。そんな疑問をもたれたことはございませんか?もしよろしければ、じっくりと考えてみませんか?理解するための鍵は「動機づけ」にあります。

動機づけについて

動機づけとは、行動につながる心の働きのことです。この心の働きによって、学習などの行動を起こし、やり続け、より上手くいくよう改善しようとします。例えば、「できるようになりたいから」という動機づけを持つお子様は、できるようになるために勉強に取り組み、やり続け、より上手くできるよう勉強方法を改善するといった行動をとります。また「怒られたくないから」という動機づけを持つお子様は、怒られないために勉強に取り組み、怒る人がいる限りはやり続け、そして、怒られない範囲でより楽な手の抜き方を見つけるといった行動をとります。

この2つのどちらの動機づけでも学習行動は生じますが、それぞれの行動はかなり違ったものとなります。ですので、学習の問題について考えるとき、これらの動機づけは区別することが重要です。区別のために、それぞれに異なる名前がついています。前者の「できるようになりたいから」といった動機づけを「自律的動機づけ」、後者の「怒られたくないから」といった動機づけを「統制的動機づけ」と言います。(自己決定理論という、人間の行動やパーソナリティの発達に関する理論によるものです。)

自律的動機づけとは、本来の自分と密接につながった自律性の高い動機づけのことです。この動機づけからは、自由で自発的な行動が生じます。先の、「できるようになりたいから」と勉強するお子様は、できるようになるためにあらゆる行動をとります。自ら勉強しようとしますし、勉強の障害があればそれを排除しようとします。また、自ら勉強方法を改善しようとしますし、改善のためのヒントを求めます。その勉強は、まさしく心からの勉強と言えるものです。自律的動機づけには、他にも次のようなものがあります。

  • 楽しいから
  • 興味があるから
  • 大切なことだから
  • 必要なことだから

一方、統制的動機づけとは、本来の自分とは乖離した自律性の低い動機づけのことです。この動機づけからは、形式的かつ受動的な行動が生じます。先の、「怒られたくないから」と勉強するお子様は、怒られないために指示された行動をとるだけです。指示されなければ勉強しませんし、手の抜き方は改善しても勉強方法を改善しようとはしません。その勉強は、形だけの勉強と言えるものです。統制的動機づけには、他にも次のようなものがあります。

  • ご褒美が欲しいから
  • 規則のようなものだから
  • お母さんに認められたいから
  • 友達にバカにされたくないから

以上が2つの動機づけ、自律的動機づけと統制的動機づけについての説明です。なぜ、お子様は勉強しようとしないのでしょうか。なぜ、勉強方法を改善しようとしないのでしょうか。それは、自律的動機づけが育っていないからなのです。では、自律的動機づけが育っていないならば、統制的動機づけでさせるのが良いのでしょうか?それは必ずしも良いやり方だとは言えません。

なぜなら、統制的動機づけは学業成績に負の影響を与えるからです。このことは、様々な研究によって統計的に確認されています。いくらさせても形だけの勉強をしますので、成績が上がりにくいことは直感的にもご理解いただけると思います。事実、成績がなかなか上がらない生徒は、こちらの動機づけが優位に働いていることがほとんどです。(当塾では定期的に動機づけ診断を実施しています。)

逆に、自律的動機づけは学業成績に正の影響を与えることが分かっています。心から勉強するのですから、成績に良い影響があることはやはり直感的にご理解いただけると思います。事実、私どもの塾においても、成績を上げ続ける生徒や、劇的な成績向上を見せる生徒は、必ずこちらの動機づけが優位に働いています。

このことから言えるのは、学習の問題は、心の問題であるということです。もちろん学習の問題の直接的な原因は、勉強しないことや、勉強方法が良くないことにあるのでしょう。ただ、それはあくまでも表面的な現象にすぎないのです。それだけを無理やり変えさせても解決しないのです。根本的な原因は、心にあります。動機づけにあるのです。そして、重要なのはここからです。

自律性支援について

自律的動機づけのほうが望ましいにもかかわらず、多くの人が統制的動機づけに頼りがちです。それは、自律的動機づけを育てる術を知らないからなのです。自律的動機づけは育てられます。正しい接し方を心がけることで、育てられるのです。その正しい接し方は「自律性支援」と呼ばれています。自律性支援について、自己決定理論の提唱者であるエドワード・L・デシ博士は次のように述べています。

自律性の支援とは、他者(子どもや生徒や社員)を自分自身の満足のために操作すべき対象と見るのではなく、支援する価値のある能動的なエージェント(意思ある人間※)として認めながら、かかわっていくことである。それは、彼らとかかわるとき彼らの立場に立ち、彼らの視点から世界を見るという意味である。(※原文にはない補足)

エドワード・L・デシ、『人を伸ばす力ー内発と自律のすすめ』、新曜社、P.137

自律性支援が自律的動機づけを育むことは数々の研究によって確かめられています。現に、自律性支援をご存知でなくとも自律性を尊重してこられたご家庭のお子様は、ほぼ例外なく自律的動機づけが優勢です。さらに、もともとは自律性に重きを置いてこられなかったご家庭のお子様であっても、自律性支援を受けることで自律的動機づけは育まれていきます。

お子様から答案や成績表を見せられたとき、どのように感じられ、どのように行動されていますか?もし、腹を立てられたり不安を感じられたりして、勉強するように仕向けておられるならば、もしかすると自律性支援が不十分かもしれません。お子様の成績に関心をもたず、好きにさせているという場合もまた、自律性支援が不十分かもしれません。

生徒の学習を改善すること。それが、私たちの責務です。その責務を全うするために、絶対に欠かせないことがあります。それは、生徒自身が心から勉強するようになることです。そのためには、自律的動機づけを育てる必要があります。そして、そのために現状取りうる最善の策が、自律性支援だと考えています。それは、科学に裏付けられた、確実性の高い手段だからです。

自律性支援は少し難しいですが、習得可能なスキルです。もしよろしければ、一緒に実践しながら身につけていきませんか?そして、お子様の自律的動機づけを育てていきませんか?自律的動機づけが育くまれたとき、お子様は、自から勉強しようとします。自から勉強方法を改善しようとします。そんなお子様を、一緒に育てていきませんか?

デシ博士の著書です。動機づけや自律性支援について理解を深められたいならば、この本がお勧めです。

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