Dくんが得たもの

生徒の成長

ついに来たか。Dくんは先日の模試で、5教科偏差値をおよそ17上げました。成績が上がったのは5教科全てで、最も上昇の少ない科目でも10ほど上げました。勉強することを心から受け入れた生徒は、劇的な成績向上を見せることがあります。それがついにDくんにも来たのだと思いました。

実はそんな彼も、入塾した1年ちょっと前は勉強を受け入れようとしませんでした。少しでも楽しいことがあるとすぐに流されていましたし、勉強法改善の提案もなかなか取り入れようとしませんでした。当時の彼の勉強の多くを占めていたのは、「やらされていることをうまくかわすこと」でした。目の前の面倒ごとを終わらせる、授業時間をやり過ごす、やっているように見せかける。彼の行動は成績が低迷する生徒の多くに見られるものでした。

そこで、彼にとっての「やらされていること」を少しずつ取り除いていきました。それは、彼の外側だけでなく、内側にもあったように思います。彼の心は少しずつ変わっていきました。そして、今では当初の彼からは想像もつかない行動をとります。例えば、授業が始まるまでの隙間時間にもテキストを開いていますし、休み時間に友達らとゲームをしている間にも彼の片手には暗記テキストがあります。またお母様のお話によると、彼は自分の貯金から5千円を出して参考書を買ったそうですし、お父様からの焼肉のお誘いも「(自習のために)塾に行くから」と断ったそうです。

いつの間にか彼は勉強することを受け入れたのです。勉強することを受け入れ、そして、自らの意思で動いているのです。いつするのか、何をするのか、どのようにするのか。一人で考えるのか、先生と考えるのか。そういったことを自らの意思で決めています。彼の行動は自らの意思によるものですから、その行動には自由を感じます。もし彼が外からの圧力で動かされているのであれば、彼の行動に自由は感じないでしょう。

実は、この自由の感覚は前回の記事に書いたKくん(記事はこちら)など、心から勉強する生徒全員に共通して感じるものです。そして、この自由こそが、彼がこの1年で得たもっとも大きなものではないかと思います。自分が自分として生きる。外からの圧力に服従するのでも、反抗するのでもなく、自分を貫く。そんな自由を獲得したことで、彼は本来の力を発揮できたのだと思います。つまり、彼は成績向上を得たのではなく、彼が自由を得た結果、成績向上は現れたのだと思います。

実は、塾ではとても真剣に勉強する彼ですが、家ではほとんど勉強をしないそうです。特に、塾から帰ってのゲームは欠かさないそうです。それは、ただ楽しさに流されてそうするのではなく、自らの意思でそうするのだと思います。塾で心から勉強に打ち込み、そして、家では心から安らぐ。それが彼の選んだやり方なのだと思います。

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