いちばん大切なことは

生徒の成長

今年も夏期講習が無事終わりました。参加したほとんどの生徒が心から学習に取り組みました。小学6年生のNちゃんもその一人です。夏期講習で、しっかりと受験勉強に向き合いました。彼女の学習は、間違いなく心からのものでした。

入塾直後︎
  • 簡単なことをやりたがる
  • 答えが分かればOK
  • 解説丸写しで「分かった」
︎入塾2年後
  • 難しいことに挑戦する
  • なぜそう考えるのか考える
  • 解説を聞いて、お家で練習

「やる!」難しい問題にも臆することなく挑戦しました。難しすぎてまったく手がかりがつかめなくても、手を動かしてあれこれ試行錯誤しましたし、1日考えて分からないぐらいでは諦めませんでした。また、講師の解説をしっかりと理解しながら丁寧に聞きましたし、講師のやり方を懸命に自分のものにしようとしました。解説の中で自分の分からなかった点がクリアになれば、そこからはもう一度自分でやってみようとすることもありました。

心からの学習は、授業中だけではありませんでした。宿題で出されたわけでもないのに、塾で教わったことをお家で復習しました。「家で考えてくる!」授業時間内に解ききれなかったときには、自らそう宣言しました。「勉強せず遊ぶ日にしたらいいんじゃない?」そうお母様に言われていた水曜日を、自らの意思で勉強する日にし、塾の自習室で頑張りました。講習の授業前に早く来て自習に取り組む姿もよく見られました。

夏期講習でこれほど実のある学習をしたNちゃんですが、もともとそんな学習をしていたわけではありません。以前のNちゃんの学習には、中身の伴わない形だけの行動が頻繁に見られました。彼女の報告書には、そんな記録がたくさん残っています。

例えば、サクサク簡単に進むことばかりをやりたがったり、「なぜそうなのか?」ではなく「答えが何なのか?」ばかりを気にしたりしました。また、自分で考えることなく講師の解説を丸写しして分かったことにしたり、間違えた問題の答えを赤で写して終わりにしたりもしました。本当は分かっていなくてもテスト直しが完成すればそれでよしとしたり、頭に入れるのではなくまとめノートを完成させることばかりに注力したりすることもありました。

Nちゃんの学習が形だけのものだったのには理由があります。それは、そこにNちゃんの意思が伴っていなかったからです。これまでの彼女にとって、学習はしなければならないからすることでした。そうなってしまったのは、大きなプレッシャーのためだと思います。彼女の周りには、彼女に勉強させようとする大きなプレッシャーがありました。そんなプレッシャーによって、彼女は自分の学習を見失ってしまったのだと思います。

楽しくもないし、やるべきだとも思わない。でもしなければならない。そんな理由から取り組む学習が、イキイキとした実のある学習になるはずもありません。それでも形だけはやろうとしたのは、責められないための防衛策だったのかもしれません。彼女は決して手を抜いたりサボったりしていたのではありません。彼女が置かれた状況のなかで、精一杯頑張って自分を守っていたのだと思います。

そんなNちゃんの学習が改善するためには、Nちゃんの心が変わる必要がある。そのためにはNちゃんの自律性を支援することが欠かせない。私たちはそのように考え、実践しました。その結果、Nちゃんは少しずつ変わっていきました。ただ、Nちゃんがこれほど大きく変わった一番の要因は、私たちからの支援ではないと思います。最大の要因は、お母様からの支援に違いありません。

自律性支援がしたいんです!

初めて塾にお電話くださった時のその一言を、私ははっきりと覚えています。お母様は私たちのお勧めする自律性支援に、深く共感してくださいました。そして、ご家庭で熱心に実践しようとされました。子どもをコントロールすることに慣れている場合、自律性の支援はとても難しいです。ですから、最初はなかなかうまくいかなかったそうです。ついつい怒ってしまったり、自律性を支援しているつもりが放任になってしまったり。そんな時、たびたび相談のお電話をくださいました。

私どもに相談くださるばかりか、本から学ぼうともされました。「難しすぎて頭に入らないです!」そう口にされながらも、塾のおすすめ本を何冊もお読みくださいましたし、お母様ご自身が学びやすい育児書をお探しにもなられました。さらに、怒りをコントロールするためのアンガーマネジメントの学習もされるほどでした。うまくいかなくても決して諦めず、実践を続けて来られました。それほどに懸命に、Nちゃんの自律性を支援しようと努力されました。

そんなお母様がご紹介くださった本に、とても印象的な言葉がありました。

じゃぁ秘密を教えるよ。とてもかんたんなことだ。ものごとはね、心で見なくてはよく見えない。いちばんたいせつなことは、目に見えない。

サンテグジュペリ、星の王子様、P.108

子どもの学習がうまくいかない時、ついつい目に見えることばかりに気を取られてしまいます。成績や点数が低い。学習時間や学習量が少ない。宿題をしていない。学習の仕方が悪い。授業態度が悪い。しかし、お母様はそのような目に見えるものには惑わされませんでした。もっと大切なものがある。それを、しっかりと見抜いておられました。それは、Nちゃんの学習を目で見るのではなく、心で見ようとされていたからなのだと思います。

そんなお母様からの、自律性の支援と大きな愛情。それがしっかりと届いたからこそ、Nちゃんの心、そして学習はこれほどに変わったのだと思います。

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