Yくんの勇気

「先生、やりました!」

この春、高校生になったYくん。自信に溢れた表情で彼が発したのは、満点の報告でした。中間テストの物理で学年トップを取り「期末は満点を取る!」と宣言していました。彼は、見事にそれを成し遂げたのです。

今の彼は本当に生き生きと勉強しています。嫌々させられるのではなく、自ら考えて行動しています。どうすればもっと理解を深められるのか。彼は自身の感覚を頼りに、自分の学習をコントロールしています。そして、学習に対してどんどん自信を深めつつあるように思います。

今はこんな彼ですが、昔からそうだったわけではありません。面倒なことを手っ取り早く終わらせたい。彼が当塾に通い始めた中学2年生の頃、彼の学習の目的は終わらせることでした。ですので、学習改善のための提案をなかなか受け入れようとはしませんでした。そして、何度も失敗を繰り返しました。

失敗を繰り返してしまう彼でしたが、それでも、彼には可能性を感じていました。なぜなら、彼は言い訳をしなくなっていったからです。言い訳をするのではなく、失敗の原因を自分の中に求めるようになっていったのです。「自分がやっていないから、成果が出ないのだ。」彼の理屈は非常にシンプルでした。

何かがうまくいかないとき、多くの人は、自分の外側に原因を求めてしまいます。運が悪かった。先生の教え方が悪かった。勉強する時間がなかった。外側の何かが悪いのであって、自分は悪くないんだ。そう思うことで、自分を守ろうとしてしまいます。

しかし、Yくんは違いました。彼は、潔く失敗の責任を引き受けるのです。行動こそなかなか起こしませんでしたが、きっと彼は彼なりにしっかりと現実に向き合っていたのだと思います。それはとても勇気のいることだと思います。

では、そんな彼の勇気はどうして養われたのでしょうか。彼が元々勇気ある性格だったのでしょうか?もちろん、それもあると思いますが、忘れてはならないのはお母様の支えだと思います。

彼が塾に来た当初、お母様はYくんに対してとてもイライラすると仰いました。朝起きられないにもかかわらず遅くまでゲームをしてしまう彼、テスト前だと言うのに一向に勉強しようとしない彼、「やる」と言ったにもかかわらずなかなか実行しようとしない彼、声がけにいちいち反発する彼。そんな彼にかなり手を焼いておられるようでした。

お母様は、私たちの提案を受け入れてくださいました。「させる」のではなく、彼が自ら「する」と思えるよう、やる気を育てましょう。お母様は、深く、本当に深くYくんのことを考えておられるようでした。そして、とても辛抱強く彼の成長を支えられたのです。

当初、Yくんの良くない面に目をむけがちなお母様でしたが、次第にYくんの良い面にも目をむけられるようになられました。Yくんの何気ない小さな成長をしっかりと捉えていらっしゃるようでした。そしてある日、このように仰いました。

「あれだけ憎たらしかったのに、今は可愛らしく思えるようになったんです。」

お母様の温かい支援の元、きっとYくんは責任転嫁する必要性を感じなくなっていたのではないか。そして、持ち前の潔い性格と相まって勇気が育まれていったのではないか。Yくんの変化を、お母様の温かい支え抜きに説明することは難しいように感じました。

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